2003年12月07日
JOSHUA DAVIS "THE BEAUTIFUL ACCIDENT"

joshua1.jpg joshua2.jpg

2003/12/06 Sat
色付いたイチョウ並木が美しかった早稲田大学にて、世界を代表するウェブ・プログラミング・アーティストJoshua Davis(以下、ジョシュア)の講演会「FLOW」が行われた。ちょうどその前日グランプリが発表されたキャノン・デジタル・クリエーターズ・コンテストの審査員として来日していたジョシュアに急遽macromediaがお願いをして実現したようだ。早稲田大学のご好意で「学び」の象徴である大学の一室が会場として使われ、さながら「情報リテラシー学科教授ジョシュア・デービスの講義」を聴きにいった感じで久々に大学のキャンパスに入った僕にとっては懐かしく、親しみやすい会場の雰囲気。

さて、本題。ジョシュア・デービスと言えば、インタラクティブな実験サイトのさきがけとなったpraystation.comのデザイナーとして)あまりにも有名だが、WEBという入れ変わりの激しいメディアにおいて、長い間トップアーティストの一人として君臨する「巨匠」あるいはWEB界の「インベーダー」が、一体どんな言葉を喋り、何を考えているのだろうか。折角なので聞けたらいいなと、彼の講義に耳を傾けた。

まず改めて驚愕したのは、プログラムによる描画の美しさだ。彼の作品の美しさは、偶発的で幾何学的、なおかつ大胆な階層構造とトリミングにあると思っていたが、それはテクニカルな意味でも真実だった。

リンデンマイヤーのLシステムを基本とした「素材と、あるルールを用意し、後はプログラムによってにランダムに描画させる」というシンプルな方法論は、彼のデザインフローをイラストレーターでの地道な描画作業から、あるプログラムを組んだらスペースキーを押すだけというものに劇的に変換してしまった。しかも、そこには人為的な側面は薄くなって、むしろ有機的な、生物学的な美がそこに生まれるのだ。

作品を作るプロセスの裏側になるもの、そのキーワードが講演のテーマである「FLOW」である。それはまさに、「流れ」に身を(この場合作品を)まかせるというスタンスだ。そして、「流れ」に秘めるパワー、それが「THE BEAUTIFUL ACCIDENT」というアウトプットの結果だ。このプロセスを単純に理解しようとすると、ランダムで偶発的なアウトプットならすべてが美しいとなるかもしれない。多分、そのようなテクニカルな「作風」の作家たちは世界にたくさんいるだろう。でも、これは単なる無作為への賞賛にすぎない。

では、彼は何が違うのかというと、それは彼の独創的なアイデアと、非常にオタクな側面といえるアウトプットへの異常なこだわりに始点があることである。冗談で「一週間徹夜してスペースキーをたたくんだ」と言っていたが、それはあながち大げさな嘘ではあるまい。全ての偶発は、基本的なフレームワーク、つまり彼の美意識を実現するためのプログラム上で起こっているもので、その上でそのアクシデントは「美しいか、否か」を彼が決定するのだ。その心震える瞬間にスクリーンショットを撮る。だからこそ切り取られた「美しい偶然」は、彼のアートへのアプローチが凝縮された、深い味わいの作品につながるのである。

次に驚愕したのは、独創的なアウトプットへのメソッドだ。それは一言で言うと「置換」することにあった。例えば、全てのデジタライズされた作品はドット、すなわちこんな形(■)でできている。このときジョシュアは何を思ったか。それは「もし■を自分の作った形に置換したらどうなる??」だった。葛飾北斎の原画をデジタライズし、花と枝と葉で置き換えた作品(worldwide designers 2007に出展)で、まったく誰も見たことのない(予想すらしていない)北斎をプレゼンテーションしてくれたのだ。

他にもこんなエピソードを紹介してくれた。彼は、フラッシュのグラデーションが大嫌いだというのだ。どうしたらいいものかとカラーミキサーパレットを「1年間」見続けて、彼はグラデーションを逆にし、透過することを思いついた。そして、そのシンボルの色、大きさ、透明度をプログラムで偶発的にアウトプットしたらどうなるのか試してみた。すると、そこには幻想的なグラデーションの美しい世界が描画されたのだった。それはキライなツールに向き合い、なぜキライなのか分析し、昇華させた結果辿り得たデザインなのだ。

最後に、彼は僕の「nikelabのサイトで腕時計を壊すというものがあったが、壊すことによる表現をクライアントをどのように納得させたのか」という質問に対して、こう答えてくれた。

「僕は1995年のとき、普段の仕事を8時間して、家に帰って8時間実験していた。個人サイトは納品したサイトの紹介でななく、実験しているものをオープンにするスペースであるべきだ。そして、その実験を見て、クライアントが仕事を依頼してきたときに、私のクライアントワークはあくまでポートフォリオの延長線上になる。それこそが自分のやりたいことができる環境だね。だから、ジョシュア・デービスがやりたいことがその表現だったから、クライアントもGreat!と言ってくれるんだ。」

ジョシュア・デービスがジョシュア・デービスたる所以。本当に何よりも勉強になる講義だった。

Posted by YOSH | TrackBack   


「HIT [何か気になるモノ、コト] 」 の他のエントリーもどうぞ!



↑ページの先頭へ