
25歳で迎えた2005年の幕開けとともに、8日から12日まで香港へ旅立ちます。きっかけはWhat's Good? Conference というストレートすぎるタイトルのカンファレンスの開催を知ったこと。「イイって何?」を語るのって、僕にとっては今世紀がすぎても語り終わらない、出口のない迷路のような問いかけなわけで、この多様性の時代に敢えてなされた大それた問題提起に、反応せざるを得なかった。それは、僕の周りの友達も同調してくれて、今旅路の支度をしている。
スピーカーは、DroogのRenny(TDB2003のシンポジウム、tricoと取引中止についてきわどい質問をした思い出の人)、コレットのsarah(こんな素敵な言葉を平気で言う人)、マルタン・マルジェラ(好きなんだけど一着も持ってないメゾン)など蒼々たる外国のゲストが並ぶと思うと、実は中村勇吾さん、佐藤可士和さん、服部一成さんなどジャパンをレペゼンする方々の日本クリエイティブシーンの輸出ともとれる、意味深げなラインナップ。
何がいいのか、何が悪いのか。ロラン・バルトは、『《良い》を定義するのは、それが占める位置である』と言ったが、おそらく、「良い」と思う主体も移ろっていくならば、それは相対的な性質なのだろう。ならばこの会議は独りよがりなのかというと、そうでもない。誰もが「良い」と感じる「よさ」こそ存在しないことを認めつつも、少なくともわれわれを包む「時代の気分」には左右されていると仮説を立ててみる。カンファレンスは、ライヴなリファレンスだ。本が印刷されるよりも早いサイクルのリアルな“引用”によって、その仮説を確かめる絶好の機会だと感じている。
香港といえば、王家衛。正月に1995年の作品『天使の涙』を久々に見た。高校生のときに感じなかったエロスを感じてしまった。古本屋で発見した+81の第一号も香港のクリエーター特集。そして、アジアの誇るデザインの現場、IdNは今でも目で読むに足る雑誌だ。方やアラン・チャンは僕のメインバンク、三井住友銀行のロゴのデザインをした。この10年でおきたこと、それは返還という国家単位のシフトだ。なかなか体験できない強烈なパラダイムシフト。
出発直前に買った発売したての本『香港アート&カルチャーガイド』のサブタイトルが「香港特別藝術区」。そのまえがきには、香港の若い世代は返還とその後のカオスを経験したことによって、否応もなくアイデンティティを模索しなければならなくなったという歴史の事実が描かれている。飛行機4時間半でいける街のドラスティックな変化は、確実にアウトプットされてきたことになる。ここで、その香港で行われるカンファレンスで、日本のスピーカーが大半を占めることを思い返す。日本に何の歴史の事実が、あった?
『この街が生み出すのは、むっとするほど濃い大衆文化(ポップカルチャー)だ。』とは、前述のカルチャーガイドの一説。この中にも『帝国』で提示された世界的史なキーワード「大衆」が混ざっていた。現代思想、グラフィティ特集の副題は、「マルチチュードの表現」。今、大衆文化は表層的で画一的なポップカルチャーから、意思を備えた一個人の集合としての大衆、すなわちマルチチュードの、マルチチュードによる、マルチチュードのための文化に移行しつつあるのではないか。それは文化の新しい段階、真のマルチ・カルチャーへの移行だ。マルチをマルチチュードに読み替えたとき、マルチ・メディアという語感の目まぐるしい復興も十分にありうる。それぞれのマルチチュードが、その影響力によって移動性のあるメディアになりうるのだ。
出発3日前まで無かった人一倍の高揚が、このとまらない文章を書きたてる。「憧れの場所」と描いた文学的な旅は4年ぶりの海外へ。まずは無事に帰ってこれますように。
Posted by YOSH | TrackBack