
シュタイナー学校は、ルドルフ・シュタイナーによって考案されたオルタナティブな学校だ。1910年代の混迷を極めたドイツで誕生したその教育は、「教科書がない」、「テストがない」、「担任が8年間変わらない」など、今の普通教育では根本的に異なるシステムを採用している。(シュタイナー教育についてはこのページに詳しい)
では、教科書の代わりに何を使うかというと、教科ごとに「エポックノート」と呼ばれるノートが渡され、表紙を自由にデザインしたり、学んだことを自分の気になるままにカラフルに埋めていく。(画像参照)一年たったときそのノートは、自分だけの二つとない「手作りの教科書」となるのだ。また、絵を描くことだけでなく、歌や音楽、「オイリュトミー」と呼ばれるカラダを使った表現なども、重要なカリキュラムとして位置づけられている。大雑把にいうなら、シュタイナー学校は、教育とアートが共存した豊かな感受性を育むための教育システムなのである。ゆとり教育の反動ともいえるドラスティックな教育の方針転換や、教師のモチベーションの欠如や学級崩壊など、いろいろと教育の危機が叫ばれる中で、シュタイナー教育こそ主体的で感受性豊かな個人の成長を促す、理想的な環境ではないだろうか。
ただし、日本では法律上正式な学校としては認められておらず、藤野町に移転する前の「東京シュタイナーシューレ」に通う生徒は、「登校拒否児童生徒が学校外の施設で指導を受ける」という形で近くの公立学校に籍を置き、卒業証書はその公立小学校からもらっているようだ。このように法整備はまだまだだが、じわじわとシュタイナー教育が注目される中で、今年の4月にいよいよ、新しい試みが神奈川県藤野町でスタートする。「藤野『教育芸術』特区」の申請に伴い、小中一貫の私立「シュタイナー学園」が、2005年4月から正式な学校法人として認定されるのだ。
神奈川県藤野町は、「芸術の町」を謳う自然とアートが調和した山あいの町で、僕もまだ行ったことはないのだがヒッピーが集まる面白いトコらしい、笑。そのような土壌で、前述の「東京シュタイナーシューレ」を特区構想によって誘致に成功したのは、教育特区という誰もが関心をもつテーマということもあるし、土地の特色を活かした町づくりの試みとしても興味深い。ぜひ実際に行って、レポートしてみたい。
また、代替医療が大盛況だったBeGood Cafeも、シンクロするように3月は『ルドルフ・シュタイナー - モルゲンランド「あしたの国」のまちづくり』にフォーカスする。あしたの国とは、千葉県長南町で展開される、「教育、福祉、農業、商業、医薬、国際交流にわたる暮らしと仕事の場であり、新しい文化の発信の場――人間の再生のため」の新しいまちづくりである。娘さんが実際にシュタイナー教育を受けて感銘したという早稲田大学名誉教授の子安美知子氏を中心に、2007年春にはシュタイナー学校が設立される予定だが、教育に限らず芸術・農業・社会学・福祉まで及んだシュタイナーの思想を、都市計画で実践する壮大な構想だ。
いずれの動きにせよ、関東近辺で続くシュタイナー思想の胎動は、大都市圏に暮らす人々にとって現実的な選択肢になるだろう。シュタイナー教育はオルタナティブ・カルチャー、真柴隆弘氏の言うスローライフな未来が根付くための、突破口とみなしてもよいのかもしれない。また、そのきっかけが特区を活用した活発な地方行政のイニシアチブというのが、とても現代的で興味深い。自分の住む町は自分のライフスタイルで決める。特区構想は、見逃されがちな規制に感づかせながら、その当たり前のことを市民に突きつけているのだ。シュタイナー教育をめぐる2005年は、パラダイムシフトが視覚化される記念すべき年になるのだろうか。果たして。
Posted by YOSH | TrackBack