毎秒、1.5エーカー(約8,070平方メートル)の熱帯雨林が消滅しているという事実がある。それは1日に換算するとニューヨークの5つの行政区より大きく、1か月に換算すればバルセロナ市の102倍に、1年間ではスリランカの3倍という圧倒的な面積になる。このままだと、2025年には現在の半分が、そして2060年にはすべての熱帯雨林が失われてしまうという。それはいったい、どんな世界なんだろう。想像するだけでも怖いくらいだけど、よくない方の未来であることは間違いない。
「この調子でゆけば・・・」と銘打ったブックレット『AT THIS RATE』では、その事実を印象的な葉っぱのビジュアルとタイポグラフィで伝えている。これは、国際的なNGO"Rainforest Action Network(RAN)"の認知向上を目的としたキャンペーンの一つとしてつくられたものだ。手がけたのロンドンをベースに活動するStudio8。"GRAPHIC MAGAZINE"や"ROYAL ACADEMY MAGAZINE"などのソリッドなタイポグラフィで、エディトリアルシーンを席巻するデザインスタジオだ。


一見上空から見下ろした地図のような、不思議な感覚にとらわれるフラクタルな葉脈。肺に見立てた同シリーズのポスター「BREATHE」の”呼吸する”木々のシルエット。自然そのままのシルエットと文字の美しい組み合わせが、Studio8による仕事のセンスをもの語る。ファウンダーのマットがコンセプトについて語ってくれた。
「このアイデアは、フォトグラファーの友人と話していて思いついたんだ。彼はスケルトンのような美しい葉っぱの写真を撮りためていた。そのイメージが"2060"のポスターにつながっているんだけど、朽ちていく葉っぱの複雑な構造の美しさに、妙に惹かれたんだよね。僕たちは箱いっぱいに葉っぱを集めて、ひとつひとつの表情を選びながら撮影していったんだ。」
「いま必要なのは、現実にしっかりとフォーカスを当てること」
クライアントであるRANは、1985年に設立された老舗のNGOだ。最近では、脱石油社会を目指した"Freedom from oil"や、環境を破壊する企業への融資をストップさせる"Global Finance"キャンペーンなど、森林保護を中心にサステナブル(持続可能)なエコノミーの実現を目指して活動する、有数のアクティビスト集団である。
「僕も森林破壊についてはかなりの時間をかけてリサーチしていたんだ。だからRANと知り合ったときは嬉しかったし、すぐに意気投合したよ。”毎秒、1.5エーカーの熱帯雨林が消滅している”という事実はショッキングだったけれども、でも確かに今進行している。今必要なのは、そういう現実にしっかりとフォーカスを当てること。ビジュアル的にも釘付けにして、もっと行動につながるようにデザインしたんだ。世の中にはまだまだ重要なメッセージがあるのに、よくデザインされていないころがある。チョコレートを売りつける文句には、広告エージェンシーが毎日頭をひねっているというのにね。」

「デザイナーはクライアントのチョイスにも影響を与えられる」
今回の仕事によって、Studio8はヨーロッパの主要なアワードD&ADなど、多くの賞を受賞した。ロンドンのデザインショップMagmaなどで販売されたポスターは、売り切れ寸前となるほどの人気ぶりだ。そして、何より素晴らしい実績は、ブックレットやポスターを通じて、RANの活動内容が世界的に知られるようになったことだ。デザインの足りないところにデザインがあれば、事実を共有する土台ができあがるのである。マットは続ける。
「デザイナーはまず、今の状況を認識しなくてはいけない。熱帯雨林の破壊、それが環境や人類に与える影響を理解すること。知れば知るほど、社会的な責任が出てくるよね。僕だってもっと知る必要があるし、もっとやっていきたい。紙や印刷の選び方も重要だね。パッケージの方法のひとつひとつが、違いを生み出させるのだから。デザイナーはクライアントのチョイスにも影響を与えられるはずだし、これからは進んでそうすべきなんだ。」
(初出:WebDesigning 2007年11月号)

