INSIGHTS
【Dream and Image】
『夢の中の絵を描いてよ。』
カフェで突然小さな女の子がそういったとき、考えていたことがふっと文字になって浮かび上がってきた。夢とイメージ。そのことについてもうずいぶん、ぼんやりと考えていたからだ。「夜」をテーマにした地下の小さなギャラリーで働いていたとき、頭にはいつも「夢」というイメージがあった。
―ここは現実と夢の間にある場所。らせん階段を伝って、思考回路を下る。太陽はとっくに沈み、身体は睡眠に向かって準備している。シャープネスの効いた理性の輪郭がふっとぼやけ、眠りに近づくように頭がぼんやりしてくる、夜という不思議な時間。そのときに見た美しいイメージを、人は夢の中まで連れて行くのだろうか。
人は見た夢を、イメージを、どんな風に形を変えて作品にするのか。それを受け取る人たちは、他者のイメージの産物を、どのように自分のイメージと共鳴させ、融合させるのか。私が見たかったのは、その化学反応であり、有機的な結合、そして分離であり、その交わったところや交わらないところが織り成す色のようなものだった。
アーティストが、デザイナーが、何かを結晶を生み出そうとするとき、その根源はいったいどこなんだろう。その小さな青い炎をおこすのは、気づかず膨大に持っている、夢のかけら、イメージたちなのではないだろうか。『人は生れ落ちたときから、イメージのエンサイクロペディアを持っている』といったのはティルマンスだが、その彼もまた、自分の中の世界に対する「イメージ」を写真を通して言語にした偉大なアーティストの一人だ。
夢は記憶と想像力でできている。それから日々拾い集める小さなイメージの断片たち。誰も触ったことのない、夢という不思議な存在。思い出そうとするとするりと消えてしまうそれをつかもうと、そしてその中に横たわろうと、人は美しいものを追いかけているのではないか。人の創造力という世界の秘密にほんの少し触れたくて、様々なアーティストに「夢インタビュー」を行っていくことにした。
INSIGHTS, _ Food & Design
【Food & Design】
レストランを語るときに、「デザイン」という言葉が使われることはめずらしくなくなった。いまや「フード・デザイン」は東京では聞きなれた言葉だし、事実、有名シェフやデザイナーがコラボした店もたくさんオープンしている。スタイリッシュだし、ちょっとバブルの香りもする。食いしんぼうでオシャレなTOKYOが好きそうな言葉だ。
そもそもフード・デザインとは何だろう。美しくデコラティブな料理?食を使ったコンセプチュアル・アート?「食」のある空間をデザインするという意味では、食べやすいカトラリー、美しい店内、きびきびと立ち回るウェイターもデザインの一部だろう。食材が皿に登るまでの流通経路のデザインもフード・デザインと捉える人もいるかもしれない。
私たちの考える「フード・デザイナー(=フード・デザインを生み出す人)」とは、「人生」と「食事」、つまり人間と食の関係について深く深く考え、自分なりの形を生み出している人たちである。シェフやコック、アーティストやデザイナー、もしくは農家の人も当てはまるかもしれない。ここではそんな彼らの話を聞き、「食」と「デザイン」の新しい関係について、探っていく。
つづきを読む / English here!
INSIGHTS, _ Shop with Stories
【Shop with Stories】
shop
-noun 小売店、小規模商店
-verb 買い物をする
SHOPというコトバは、「店」という名詞であり、「買う」という動詞でもある。
世界中どこにいても、クレジットカードさえあればモノを購入できる今、私たちはいったい何を「買って」いるんだろう?ロンドンにあって東京にないものなどもはや存在しない。「ここにしかないもの」というのは、作為的に価値を付加するのでなければ、存在しなくなってしまった。
旅をしていると、誰でも一度は考えたことがあるはずだ。自分が生きるのに必要なものなど、この小さなスーツケース一つに入る量で十分なのだと。それでも私たちは日々購入を繰り返す。
どうか批判的な意味にはとらえないでほしい。ショッピングは社会にとって重要な経済活動でもあるし、まず何よりも楽しい。だけど大量生産のコピー物を無作為に買いまくる時代は過ぎた。私たちはみんな、商品の「価値」について、以前よりもずっと、考えて買い物するようになってきている。今私たちは「買う」という行為になにを求めているんだろう?いったいどんな店が、その舞台としてふさわしいのだろうか?
このテーマのもと、私たちは、消費の舞台となる「ショップ」、そしてそのショップを“デザイン”する人としての「ショップ・ディレクター」に注目してみることにした。私たちの仮定するいいショップの条件とは、ディレクター(店主)がセレクトした商品それぞれの背後に、「物語」が隠れている、と感じさせてくれること。
今の消費社会の中で、作り手と私たち使い手はコミュニケーションしているはずなのに、その間をつなぐ物語は断絶している。商品が生まれた背景、作り手の思い、そんなたくさんの「物語」を、「店」という空間を通して、また別の人へ手渡ししていく。そんな「伝え手」が、ショップディレクターの役割ではないか。ディレクターは、あたかも寓話集を編集するように、物語を持った「商品」を集め、コミュニケーションの「場」をデザインする。人々は新しい「物語」、新しい「世界」を求めて、そこに集まってくる。
そんな仮説を立証するために、世界中の都市で、私たちから見て素敵なショップを持つディレクターの方々にインタビューを行っていく。
つづきを読む / English here!
INSIGHTS, _ Ethical Creatives
【Ethical Creatives】
いま欧米では、“エシカル(Ethical)”という言葉が、雑誌などで日常的に使われている。日本語に直訳すると、「倫理的」ということになるけれど、それほど肩肘張った印象ではない。
Ethical Shoppingといえば、環境に配慮したエコロジカルな商品、あるいは公平な貿易が行われているフェアトレードの商品などを積極的に選択する態度のことを言う。他にも、Ethical Jobsという求人サイトもあるし、TreeHuggerでは「2007年の主要なトピックはEthical Designだろう」と宣言していた。
では、デザインにおいて“エシカル(Ethical)”とは何だろうか。平たく言えば、“ちょっと考えてみること”かもしれない。
あらゆる物事には、できあがるまでにいいも悪いもいろんな事情があって、その本質が見えづらくなってきた。だからこそ何かをデザインするときに、マテリアルやテクノロジー、メディアをどう選択するのかが、ますます重要になってきている。そうしたデザイナーの裁量が問われる多くの事柄について、さまざまな影響を知り、想像をふくらませることが、今求められているのではないだろうか。地球に優しいデザインだって、結局は一つひとつの判断の積み重ねなのである。
ここでは、デザイナーに浸透しつつある「エシカルな創造性」を取り上げ、デザイナーの倫理的な価値観についてのリサーチを行っていく。
つづきを読む / English here!
INSIGHTS, _ Independent Designers
【Independent Designers】
今、「インディペンデント」という言葉はどういう意味を持つのだろう?また、デザインにおけるインディペンデントを実践する人、すなわち「インディペンデント・デザイナー」がいるとしたら、それはどんな人なんだろう?
例えば、著者が「インディペンデントである」と判断したショップのみを紹介するロンドンのユニークなガイドブック、『Independent London/ store guide』にある定義を見てみると、そこにはこう書いてある。
Independentとはすなわち、「他の権威、統制、支配から自由であり、他の機関・団体の管理下には置かれず、自己統治が可能である状態(free from the authority, control, or domination of somebody or something else, especially not controlled by another state or organization and able to self-govern)」。かつての「インディ」という単語が示していたのは色濃い「自由」さだった。だけど今Independentであることとはすなわち、自己統治(self-govern)を指すのではないか。
例えば、クライアントの規模や報酬だけでなく、趣旨に賛同してデザインワークを提供すること。例えば自分の声を直接届けられるメディアを作るスキルを持っているということ。それらはすべて、デザインに関するインディペンデントであり、サステナブル(持続可能)な生きる力だ。
支配や従属ということに対してアンチを掲げることにクリエイティビティの本質があるのではない。自分のもっとも快適なワークスタイルでメッセージを発するやり方を身につけた人が、今本当にインディペンデントな人だといえる。
そんな「インディペンデント・デザイナー」たちを探し、「デザイン」と「インディペンデント」の関係を探るべく、リサーチを行っていく。
つづきを読む / English here!


